マリオネット



旧市街広場界隈やカレル通りには個性的なマリオネットを売る店が並んでいる。
市内にあるマリオネット劇場も1つや2つではなさそうだ。上演されているのは
たいていモーツアルトの『ドン・ジョバンニ』である。昔から劇場関係の仕事に携わってきた
あるチェコ人の友人はあれはモーツアルトではない、とつぶやく。観光客をあてこんだ
娯楽本位の出し物でクラシックとは程遠いものだと・・・。


そうは聞いていたのだが、やはり一度は自分の眼で確かめたいと思い、夫と二人で
クリスマスの晩に国立マリオネット劇場へ足を運んだ。地下に降りると左側に300名収容の
劇場があった。席はすべて自由席であるが、50分前から入場できるということであったので
早めに行き、前から5列目の中央の席に座った。おそらくぎりぎりの時間に着いても問題なく
適当な席を確保できたように思う。それほどホールはすいていた。

日本の文楽では人形を操る黒子はシェークスピア劇に登場する人の運命を操る魔女たちにも
例えられ、動きは精緻かつ神秘的でさえあるのだが、私が見たプラハのマリオネットはあくまでも
娯楽本位の出し物であった。糸で吊り下げられた人形たちとそれを動かす人形使いたちが一体となって
楽しい『ドン・ジョバンニ」を作り上げているように感じた。観客席からは笑い声が上がり、割り切って考えれば
充分楽しめる公演であった。途中で指揮者役の人形が観客にコップの水を浴びせるシーンがあったが、
前方に座っている観客たちの服をわずかとはいえ濡らしてしまうこの演出はあまり感心しなかった。


















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