ネルドヴァ通り



 ユネスコ世界遺産に指定されているこの通りは13世紀には城下町マラーストラナの中心地であったらしい。その後何度か
火災に遭ったが再建に力が注がれ、今でも17〜8世紀の家並みがそのままの形で残っている。城の建設を手がけた
大工や富裕な商人、及び貴族たちがこの通りに住んでいたと言われている。

 1758年まで住居番号がなかったため、番地・表札の代わりに紋章が家の外壁に施されていた。今も紋章をそのままの形で
残している建物がネルドヴァ通りには多く見受けられる。かつて弦楽器作家のエドリンガーが住んでいた12番地の家は
今では小さなレストランになっているが、3本のヴァイオリンの紋章が飾られている。他にも「黄金の杯」「赤い羊」「金の鍵」
など、カメラに収めたくなる紋章ばかりだ。この通りで特に有名なのはフクロウの目のように見える「2つの太陽」の紋章のある家で、
ここにはチェコの代表的作家の一人であるヤン・ネルダ(通りの名前はこの作家の名に由来する)が30年間住んでいたそうだ。

 32番地の老舗の薬局は1980年に改装され、現在ボヘミア王国薬局博物館となっている。内部の撮影は禁止されているが
質問には丁寧に答えてくれる。入ってすぐ右側には薬を製造した釜やタンク、貯蔵した瓶、陶器の類が陳列されているが、
更に奥へと進むと、一本の木の幹から造られた聖ロクスの像が目の前に現れる。18世紀の作品である。
聖ロクス(1350〜80頃)はモンペリエの裕福な商人の家庭に生まれたという説とフランス貴族の御曹司だったという
説があるようだが、いずれにしても豊かな家に生まれ育った彼はあるときローマへの巡礼の旅に出た。当時の中部ヨーロッパは
ペストが大流行しており、ロクスは私財を投げ打って貧しい人々の介護やペスト撲滅のために力を尽くした。
あるとき自らもペストにかかり森で最後を迎えようとしていたとき、どこからともなく犬が現れて水や食べ物を運んできたり
傷口を舐めたりして奇跡的に回復させたという。聖ロクスは以来伝染病患者の守護聖人として祭られるようになったが、
この薬局博物館に置かれている聖ロクスの木彫りの像は巡礼者の杖を持ち、ペストの病痕である片足の傷を見せ、
そしてわきにパンを咥えた犬の像が付き添っている。



   
マラーストラナ地区のネルドヴァ通り。
趣のあるこの通りを歩いていくといつのまにか
お城に通じる坂道に出ます。

3本のヴァイオリンの紋章がある家。
今は小さなレストランになっていて入り口の手前には
ヴァイオリンを弾く子供の像が置かれています。



『マラーストラナ物語』を書いたチェコの作家ネルダが
30年間住んでいたと言われる家です。
二つの太陽の紋章がある家として有名です。
通りの名前は作家ネルダの名に由来しています。
      ネルドヴァ通りの突き当りから坂道を右へと上っていくと
      すぐにお城に出られます。


                       
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