大晦日の日、たいていの店や博物館は午前中で閉まるが、夜を徹して新年を迎える人々の為に
開いている居酒屋やレストランもある。
深夜ともなるとあらゆる広場や公園、あるいは橋の上に人々が集い、持参した花火を打ち上げ、
祝杯をあげる。
衛星テレビで紅白歌合戦を見終わった後、風子を連れて外に出てみた。
あと少しで二十四時になろうとしていた。
とたんに爆竹のはじける音がし、足早に立ち去る二人の子供たちの後姿が見えた。
いつもの公園に向かって歩いている間中も花火があらゆる方向に打ち上げられ、
風子がおびえるのではと心配したが、全く動じていなかった。
風子がこわがるのは焼き芋屋さんの呼び声だけで、日本にいるときも、花火や雷の音は
あまり気にならないようであった。ピンとしっぽを上げたまま歩く風子と共に公園の見晴らしの
よいところまで行き、川向こうのお城と夜空一面に打ち上げられる花火を眺めつつ持参した
おちょこ一杯ずつの日本酒で夫と乾杯した。
深夜に公園にくることは普段ならまずありえないことなのだが、この日ばかりは多くの愛犬家が
集い(ただしほとんどのワンコはお留守番)、風子も新年の挨拶と共に何度も頭を撫でてもらった。
正月休みは普通元旦だけなのだそうだが、今年は二日目が日曜日だったため、三日目が仕事初め
となった。プラハのお正月は静かでクリスマスのように特別な料理を作ることもなく、墓地に
お参りしたり、のんびりくつろいで過ごすようだ。
チェコでは「美しい(素敵な、幸運な)一年となりますように!」と言って新年の挨拶を交わす。
英語の場合は普通「幸せな(A Happy New Year)」という形容詞が用いられるのだが、
チェコ語では好きな形容詞を選択し、挨拶を受けた人はまず礼を言ってから相手が用いたのと
同じ形容詞を使って新年の祝福を返す。年の初めのこうした挨拶の中にチェコ人らしい律儀さを
垣間見ることができたような気がしてうれしかった。
使用済みの花火を元旦の朝のお散歩のときに見かけました。
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