プラハの春音楽祭 (2005年記)



毎年スメタナの命日である5月12日から三週間に渡り、「プラハの春音楽祭」が開催される。
世界的に有名な指揮者やオーケストラの演奏を聴くために各国から音楽愛好家がこの時期プラハに集まって来る。

当然のことながらこの音楽祭にはスポンサーが多く、公に販売される以前にほとんどのチケットが買い占められてしまうため、
一般市民が人気のあるコンサートのチケットを入手するのは至難の技である。例えば初日のスメタナの「我が祖国」、
最終日のドヴォルザークのフィナーレコンサート、及び弦楽器では世界に冠たるチェコフィルの演奏日のチケットは
瞬く間に完売となる。

年が明けてからでは間に合わないというので心得た人は12月中に切符を買おうと列に並ぶ。
近年オープニングが5月12日と13日の両日に催されるようになったおかげでスメタナの「我が祖国」全楽章を聴ける可能性が
増したのはうれしいことだ。昨年はプラハの最大の楽団の一つであるオーケストラ プラヒーフォクによる「我が祖国」全楽章を聴いた。
さすがにオープニングだけあってホールは華やいでいたが、日本からの団体客も多かった。
演奏は期待を裏切らない素晴らしいもので拍手の渦がホールを満たしたが、オーケストラがアンコールに応えることはなかった。

今年はチェコフィルのベートーベンを聴きたいと思っていたが、何とか一階の席の切符を購入することができ、
待ちに待った5月14日、夜8時がやってきた。ベートーベンがもっとも幸せだった時期に創作されたというこのヴァイオリン
コンチェルトは美しく、優しく、荘厳かつ崇高と評価される名曲だが、さすがにチェコフィルの演奏は素晴らしく、
特に第一ヴァイオリンのすすり泣くような音色は心の隅々にまで響き渡った。後になってその奏者が世界でも数本の指に入る
イスラエル人のヴァイオリニストであったことを知った。
演奏が終わっても拍手が鳴り止むことがなく、トップヴァイオリニストはソロで二曲もアンコールに応えてくれた。
普段は気難し屋で通っているチェコフィルのメンバーも全員足を踏み鳴らし、体全体で満足感を表現していた。
音響効果抜群のスメタナホールで聴いたこの素晴らしい曲を生涯忘れることはないと思う。






開演前のステージを客席から撮ったものです。




スメタナホールの天井です。



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